タワーマンションや高層階のオフィスなど、見晴らしの良い上層階で「工事不要のSoftBank Airを使いたい」と考えている方は多いでしょう。しかし、インターネット上では「高層階は電波が届きにくい」「かえって繋がりにくい」といった噂も囁かれており、契約に踏み切れずにいるのではないでしょうか。特に「11階」という具体的な階数で、その利用可否を気にされている方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、SoftBank Airと「高層階」の関係について、単なる憶測や口コミレベルの話ではなく、電波の物理的な特性や建物の構造といった科学的な観点から、その真実を徹底的に解剖していきます。
なぜ高層階で電波が弱まることがあるのか、あなたのマンションの窓は大丈夫か、そして契約で失敗しないための完璧なチェックリストまで。この記事を読めば、高層階におけるSoftBank Airの利用に関するあなたの不安は、確信へと変わるはずです。
第1章:【原理】なぜ「高層階は繋がりにくい」と言われるのか?
まず、なぜ見晴らしが良いはずの高層階で、逆に電波が弱まるという現象が起こり得るのか、その最大の理由である基地局アンテナの「チルト角」について理解しましょう。
基地局アンテナの「チルト角(下向きの角度)」という宿命
スマートフォンやSoftBank Airが利用するモバイルネットワークの電波は、街中に設置された「基地局」のアンテナから、お椀を逆さにしたような形で、地上に向かって放射されています。これは、より多くのユーザーがいる地上付近のエリアを効率的にカバーするためです。このアンテナの「下向きの角度」を**チルト角(機械的チルト/電気的チルト)**と呼びます。
この仕組みにより、基地局のすぐ近くにあるビルの超高層階(例えば30階や40階)は、メインで放射される電波のビームの上を通り越してしまい、かえって電波が弱くなる、あるいは圏外になるという現象が発生するのです。地上にいる大勢の人々に効率よく電波を届けるための設計が、超高層階にとっては裏目に出てしまうのです。
ケーススタディ:「11階」は危険な高さなのか?
では、ご質問の「11階」はどうでしょうか。結論から言えば、11階という高さは、このチルト角の影響を受けるリスクは比較的低いと考えられます。一般的に、チルト角による影響が顕著に現れ始めるのは、周辺の建物の高さを大きく超える20階以上の超高層階と言われています。11階程度の高さは、地上の障害物(低い建物や木々)を避けるのに十分な高さを確保しつつ、基地局のメインビームからも外れにくい、むしろ**電波を受信する上では好条件な「スイートスポット」である可能性が高い**と言えるでしょう。
第2章:高層階におけるもう一つの障壁 ― 「窓ガラス」と「建物構造」
しかし、高層階にはチルト角以外にも、電波を阻害する見過ごせない要因が潜んでいます。それが、建物自体、特に「窓ガラス」の性能です。
要注意:電波を通しにくい「Low-E複層ガラス」と「網入りガラス」
近年のタワーマンションや高機能なビルでは、断熱性や遮熱性を高めるために、特殊な加工が施された窓ガラスが使われていることが多く、これがモバイル電波を大幅に減衰させる原因となります。
・Low-E複層ガラス:ガラスの表面に特殊な金属膜(Low-E膜)がコーティングされており、夏の熱線や冬の暖房熱を反射します。この金属膜が、電波も一緒に反射・減衰させてしまいます。見分け方として、ガラスの端に「Low-E」という刻印があったり、少し緑がかったり、鏡のように反射して見えたりする特徴があります。
・網入りガラス:防火目的でガラスの内部に金属のワイヤーが埋め込まれているガラスです。この金属ワイヤーが電波を吸収・反射し、室内への電波の侵入を妨げます。
これらのガラスが使われている部屋では、たとえ窓際にAirターミナルを置いても、十分な電波を受信できず、速度が著しく低下する可能性があります。
鉄筋コンクリート構造の影響
高層マンションの多くは、頑丈な鉄筋コンクリート構造で作られています。コンクリートは電波を遮断する性質が非常に高いため、窓から離れた部屋の奥まった場所では、Wi-Fiの電波だけでなく、SoftBank Airが受信する4G/5Gの電波も極端に弱くなります。設置場所は、必ず窓際一択となります。
第3章:【実践】高層階居住者のための契約前・パーフェクトチェックリスト
これらのリスクを踏まえ、高層階に住むあなたが契約で失敗しないための、完璧なチェックリストを提案します。
ステップ1:公式サイトで「住所」がエリア内かを確認する
まずは基本のエリア確認です。ソフトバンク公式サイトの「SoftBank Air エリア確認」ページで、ご自身のマンションの住所がサービス提供エリアに含まれていることを確認します。
ステップ2:自宅の窓ガラスの種類を確認する
ご自宅の窓ガラスに「Low-E」の刻印がないか、金属のワイヤーが入っていないかを確認します。もし該当する場合、電波が減衰するリスクがあることを念頭に置きます。
ステップ3:スマートフォンの電波で簡易チェックする
もし、ソフトバンクまたはワイモバイルのスマートフォンをお持ちであれば、それが最も手軽で有効な電波調査ツールになります。Wi-Fiをオフにし、Airターミナルを設置しようと考えている窓際で、アンテナピクトが何本立つか、そしてスピードテストアプリでどの程度の速度が出るかを確認します。ここで十分な速度が出ていれば、SoftBank Airも快適に利用できる可能性が高いと判断できます。
ステップ4:「初期契約解除制度」を最大限に活用する
高層階での利用には、ここまで解説したように、実際に設置してみないと分からない不確定要素がどうしても伴います。そこで最強の味方となるのが、契約から8日以内であれば無償でキャンセルできる「初期契約解除制度」です。
高層階にお住まいの方は、この制度を利用して「8日間のお試し期間」があるものと考え、契約することをお勧めします。実際にAirターミナルを自宅の様々な窓際に設置してみて、満足のいく速度が出るか、通信は安定しているかを徹底的にテストします。もし満足できなければ、期間内に解約手続きをすれば、金銭的なリスクは一切ありません。これこそが高層階居住者にとって、最も確実で賢い契約方法です。
第4章:高層階でこそ試したい!最適な設置と活用法
無事に契約し、利用できることが確認できたら、さらに快適な環境を追求しましょう。
・最適な窓を探す:マンションには複数の窓があるはずです。東向き、西向きなど、方角が違う窓際にそれぞれ設置してみて、最も速度が出る「当たり」の窓を探しましょう。
・反射波を意識する:高層階では、向かいのビルに反射した電波が届く「反射波」も重要な受信源となります。窓に対して真正面だけでなく、少し角度を変えて設置してみると、思わぬ好結果が得られることがあります。
・宅内のWi-Fi環境を整備する:コンクリートの壁でWi-Fiが届きにくい部屋がある場合は、無理にAirターミナルの置き場所を変えるのではなく、「メッシュWi-Fi」システムを導入するのが最もスマートな解決策です。Airターミナル6であれば本体が親機となり、専用の子機を追加するだけで家中に安定したWi-Fi網を構築できます。
まとめ:高層階は不利ではない。「正しい知識」で最適な環境は作れる
SoftBank Airと高層階の関係は、決して「繋がらない」と一括りにできるものではありません。チルト角や窓ガラスといった特有のリスク要因を正しく理解し、契約前に適切なチェックを行い、そして「初期契約解除制度」という安全策を講じる。この正しい知識と手順さえ踏めば、高層階はむしろ地上の障害物を避けられる、絶好のロケーションにもなり得ます。
特に11階という高さは、リスクよりもメリットの方が大きい可能性が高いです。この記事を参考に、ぜひあなたの高層階ライフを、快適なインターネットで満たしてください。