SoftBank Airというサービス名は同じでも、その通信体験の質は、あなたが利用する「Airターミナル」という端末の世代によって、全く別のものになると言っても過言ではありません。2014年のサービス開始以来、Airターミナルは技術の進歩と共に、劇的な進化を遂げてきました。

しかし、多くのユーザーはご自身がどの世代の端末を使っているのか、そして最新の端末がどれほどの性能向上を遂げているのかを正確に把握していません。

この記事では、SoftBank Airの黎明期を支えた初代モデルから、5G・Wi-Fi 7に対応した最新の「Airターミナル6」まで、これまでに登場した全ての歴代Airターミナルを網羅し、そのスペックと進化の歴史を徹底的に比較・解説します。この記事を読めば、SoftBank Airの真価と、あなたが今選ぶべき端末が明確にわかります。

【全機種比較】歴代Airターミナルのスペック一覧

まずは、これまでに登場した主要なAirターミナルのスペックを一覧で比較し、その進化の全体像を掴みましょう。

機種名 Airターミナル
(初代)
Airターミナル2 Airターミナル3 Airターミナル4 NEXT Airターミナル5 Airターミナル6
発売日 2014年12月 2015年12月 2016年12月 2019年3月 2021年10月 2024年11月
5G対応 非対応 非対応 非対応 非対応 対応 対応
下り最大速度 110Mbps 261Mbps 350Mbps 612Mbps 2.1Gbps 2.7Gbps
Wi-Fi規格 Wi-Fi 4 (n) Wi-Fi 5 (ac) Wi-Fi 5 (ac) Wi-Fi 5 (ac) Wi-Fi 6 (ax) Wi-Fi 7 (be)
対応周波数帯 2.4GHz 2.4/5GHz 2.4/5GHz 2.4/5GHz 2.4/5GHz 2.4/5/6GHz
アンテナ技術 2×2 MIMO 2×2 MIMO 4×4 MIMO 4×4 MIMO
メッシュWi-Fi 非対応 非対応 非対応 非対応 非対応 親機機能
最大接続台数 不明 10台 10台 64台 128台 128台
※速度は全て技術規格上の最大値です。

黎明期から成熟へ:4G時代のAirターミナル(初代〜4 NEXT)

5Gが登場する以前、SoftBank Airは4G(LTE)回線を利用してサービスを提供していました。この時代は、通信速度の向上と、家庭内でのWi-Fiの使いやすさを改善する歴史でした。

Airターミナル(初代):”工事不要”の概念を打ち立てた先駆者

2014年に登場した初代機は、下り最大110Mbpsと今見れば控えめなスペックですが、「コンセントに挿すだけ」という革新的なコンセプトを世に示した記念碑的なモデルです。当時のADSL回線に代わる新たな選択肢として、多くの注目を集めました。Wi-Fiも2.4GHz帯(Wi-Fi 4 / 802.11n)のみの対応で、家庭内での利用もまだ限定的でした。

Airターミナル2:5GHz帯対応で家庭内Wi-Fiが快適に

翌年登場した2では、下り最大速度が261Mbpsへと向上したことに加え、初めて電波干渉の少ない5GHz帯のWi-Fi(Wi-Fi 5 / 802.11ac)に対応しました。これは大きな進化であり、電子レンジや他のWi-Fi機器、Bluetoothといった2.4GHz帯に集中しがちな電波干渉を避け、より安定したWi-Fi通信が可能になりました。動画視聴など、安定性を求める用途での実用性が大きく向上したモデルです。

Airターミナル3:4×4 MIMOで接続安定性を強化

3では、下り最大速度が350Mbpsに向上。さらに、このモデルの進化を語る上で欠かせないのが「4×4 MIMO」技術の搭載です。MIMO(マイモと読みます)とは、複数のアンテナで同時にデータを送受信する技術のことで、2本のアンテナでやり取りする「2×2」から、4本のアンテナでやり取りする「4×4」に進化したことで、通信の安定性と速度がさらに改善されました。特に、家族がそれぞれスマートフォンを操作するなど、複数のデバイスを同時に接続した際に速度が落ちにくくなったのが大きな特徴です。

Airターミナル4/4 NEXT:4G時代の集大成

4G時代の最終モデルとなった4/4 NEXTは、下り最大612Mbps(4 NEXTの場合)に達し、多くの光回線(マンションタイプ)に匹敵するほどのポテンシャルを持つに至りました。最大接続台数も64台へと大幅に増加し、スマートスピーカーやIoT家電が普及し始めた現代のスマートホーム需要にも応える性能を備えました。このモデルで、SoftBank Airは「ADSLの代替」から「光回線の有力なライバル」へとその地位を確立したと言えるでしょう。

5G革命と次世代への布石:5G時代のAirターミナル(5〜6)

2021年以降、SoftBank Airは5Gに対応することで、新たなステージへと突入します。ここからの進化は、単なる速度向上だけでなく、「通信の質」そのものを変えるものとなっていきます。

Airターミナル5:5GとWi-Fi 6による「速度革命」

Airターミナル5は、まさにゲームチェンジャーでした。初めて5Gに対応し、下り最大速度は2.1Gbpsと、4G時代とは桁違いのスペックを実現。さらに、家庭内のWi-Fiも「Wi-Fi 6」に対応しました。Wi-Fi 6は、OFDMAという技術により通信の順番待ちによる遅延を大幅に削減し、MU-MIMOという技術で複数のデバイスと同時にデータを送受信できるため、多数のデバイスを同時に接続した際の通信効率が劇的に向上しました。SoftBank Airのイメージを「遅い」から「速い」へと塗り替えたモデルです。

Airターミナル6:「通信の質」を極めるWi-Fi 7とメッシュ対応

そして最新のAirターミナル6は、速度を2.7Gbpsへと向上させつつ、通信の「質」を極限まで高める進化を遂げました。次世代規格「Wi-Fi 7」は、複数の周波数帯を束ねて同時に通信するMLO(Multi-Link Operation)という技術により、これまでにないレベルの低遅延と安定性を実現します。これにより、リアルタイム性が極めて重要なオンラインゲームやVRコンテンツの体験が大きく向上します。

さらに、電波干渉の極めて少ない「6GHz帯」への対応や、本体が「メッシュWi-Fiの親機」となる機能を搭載したことで、家中のどこにいても安定した高品質なWi-Fi環境を、よりシンプルに構築することが可能になりました。「速さ」の次のステージである「質の高い通信」を追求した、まさに現代のニーズに応える端末です。

利用者必見!実践的ターミナルガイド

あなたのAirターミナルはどれ?見分け方ガイド

「自分がどの端末を使っているかわからない」という方は、本体のデザインで見分けることができます。
角ばった板状のデザイン → 初代〜3の可能性が高いです。性能的に現代の利用には厳しいレベルです。
丸みを帯びた四角柱のデザイン → 4/4 NEXTの可能性が高いです。4G端末としては高性能ですが、5Gの恩恵は受けられません。
滑らかな円筒形のデザイン → 5です。5Gに対応した最初のモデルで、十分な性能を持っています。
下部にスリット(排熱口)が入った円筒形のデザイン → 6です。現行の最新・最高性能モデルです。
正確な機種名は、本体底面のシールに記載されている「品名」の項目(例:Airターミナル6など)で確認できます。

中古の旧型Airターミナルを購入してはいけない絶対的な理由

フリマアプリなどで旧型のAirターミナルが安価で販売されていることがありますが、絶対に手を出してはいけません。SoftBank Airは、ソフトバンクと直接契約した端末と、それに紐づけられたSIMカードがセットでなければサービスを利用できません。中古端末を単体で購入しても、ソフトバンクはSIMカードを提供してくれないため、文字通りただの置物になってしまいます。必ず正規のルートで契約しましょう。

旧型端末ユーザーが最新端末へアップグレードする方法と判断基準

現在Airターミナル4以前の機種を利用している方は、最新のAirターミナル6へ機種変更することで、劇的な速度向上を体感できる可能性があります。機種変更は、SoftBank Airサポートセンターへの電話で相談・申し込みが可能です。

ただし、機種変更には注意点もあります。まず、現在利用中の端末の分割払いが残っている場合、その残債を支払う必要があります。そして、新しいAirターミナル6の分割払いが新たにスタートします。そのため、アップグレードを検討する際は、まずMy SoftBankでご自身の端末の残債がいくら残っているかを確認することが必須です。

アップグレードを強く推奨するケース
・Airターミナル4以前の機種を利用していて、端末の残債がほとんどない(または完済している)場合。
・現在の通信速度に明確な不満を感じている場合。
・家族が増えたり、スマート家電を導入したりして、Wi-Fiに接続するデバイスの数が増えた場合。

【利用者別シナリオ】あなたに最適なAirターミナルは?

あなたのライフスタイルやインターネットの使い方から、どの端末が最適だったか、そして今どうすべきかを考えてみましょう。

シナリオ1:2019年に一人暮らしを始めた大学生

当時、光回線の工事が面倒でSoftBank Airを選んだあなた。契約したのはAirターミナル4 NEXTだったでしょう。レポート作成や動画視聴には十分な性能で、満足していたはずです。しかし現在、オンライン授業や複数人でのオンラインゲームが当たり前になり、友人と同じように使っているはずなのに、自分だけが遅いと感じる場面が増えてきたのではないでしょうか。それは、友人が5G対応の端末を使っているからです。端末の残債が終わっているのであれば、最新のAirターミナル6へのアップグレードは、あなたの学生生活の質を大きく向上させるでしょう。

シナリオ2:2022年に5G対応に惹かれて契約したファミリー

あなたは、5Gの高速通信を期待してAirターミナル5を契約しました。お父さんはリビングで4K映画を楽しみ、子供たちはそれぞれの部屋で動画やゲームに夢中。Wi-Fi 6の恩恵もあり、以前の4Gルーターとは比べ物にならない快適さを手に入れたはずです。しかし最近、子供がVRゲームにハマり、「一瞬止まる!」と声を上げることが増えました。また、Wi-Fiが届きにくい部屋があるのも悩みの種。あなたの家族には、低遅延性能に優れ、メッシュWi-Fiで家中に電波を届けられるAirターミナル6が、次のステップとして最適な解決策となるでしょう。ただし、Airターミナル5の残債額と、得られる快適さを天秤にかける冷静な判断が必要です。

結論:2025年以降、選ぶべきAirターミナルは一択

ここまで歴代全機種を比較してきましたが、結論は非常にシンプルです。これからSoftBank Airを契約する、あるいは旧機種から機種変更するのであれば、選ぶべき端末は最新の「Airターミナル6」一択です。

Airターミナル5も5Gに対応した優秀な端末ですが、Wi-Fi 7やメッシュ機能といった「家庭内での通信の質」を高める機能は搭載されていません。現代の多様なインターネット利用シーンをストレスなく楽しむためには、Airターミナル6の持つ安定性と拡張性が不可欠です。4G時代に契約した端末を使い続けることは、月額料金に見合ったサービスを受けられていない状態と言えるため、残債の状況を見ながら、早めのアップグレードを強くお勧めします。