「SoftBank Airを契約した(検討している)けど、大好きなオンラインゲーム『Apex Legends』は快適にプレイできるんだろうか?」――工事不要で手軽に高速回線が手に入るSoftBank Airですが、ことオンラインゲーム、特に一瞬のラグが勝敗を分けるFPS(ファーストパーソン・シューティング)となると、その実力は未知数であり、多くのゲーマーが不安を感じています。
結論から言えば、SoftBank AirでApex Legendsを「競技レベルで、常に完璧な環境でプレイする」のは、光回線に比べて非常に難しいです。しかし、「カジュアルに楽しむ」レベルであれば、正しい知識と徹底的な環境構築を行うことで、ラグを最小限に抑え、十分にプレイ可能なレベルに引き上げることは可能です。
この記事は、単に「できる・できない」を論じるものではありません。SoftBank Airという環境で、Apex Legendsをプレイするために”できることの全て”を網羅した、あなたのための究極の環境構築・最適化ガイドです。この記事を最後まで実践すれば、あなたはSoftBank Airのポテンシャルを最大限に引き出し、Apexの戦場へ飛び込む準備が整うでしょう。
第1章:【ゲーマーの基礎知識】なぜ無線インターネットはFPSに不向きなのか
対策を講じる前に、まずなぜSoftBank Airのような無線を利用したインターネット(FWA – 固定無線アクセス)が、Apex Legendsのような競技性の高いFPSに原理的に不向きとされるのか、その根幹をなす3つの技術指標を理解する必要があります。
指標1:Ping値(レイテンシ) ― 応答速度
Ping値は、あなたのPCやゲーム機から送ったデータが、ゲームサーバーに到達し、その応答が返ってくるまでの往復時間(単位:ms、ミリ秒)です。この数値が**小さい**ほど、ゲーム内のあらゆるアクション(射撃、移動など)が速くサーバーに反映されます。
・光回線:5ms~20ms程度で非常に安定。
・SoftBank Air:40ms~70ms以上と高めで、かつ時間帯によって大きく変動しやすい。
Ping値が高いと、敵を見つけて撃ったつもりが、サーバー上では既に敵に撃たれて負けていた、という「撃ち負け」の直接的な原因になります。
指標2:パケットロス(パケロス) ― データ欠損率
インターネット通信は、「パケット」という小さなデータのかたまりを連続で送受信することで成り立っています。パケットロスは、このパケットが途中で失われてしまう現象です。無線通信は、有線に比べてこのパケットロスが発生しやすいという宿命を負っています。Apex Legendsのプレイ中にパケットロスが発生すると、キャラクターが瞬間移動(ワープ)したり、弾が敵に当たらなくなったり(弾抜け)する原因となります。
指標3:Jitter(ジッター) ― Ping値の揺らぎ
Jitterは、Ping値の変動の大きさを示す指標です。たとえ平均Ping値が50msでも、瞬間的に30msになったり100msになったりと、この揺らぎ(Jitter)が大きいと、ゲーム体験は非常に不安定になります。常に一定のPing値を保ち続ける「安定性」は、平均値以上に重要です。無線通信は、このJitterも大きくなりやすい傾向があります。
第2章:【必須条件】Apexをプレイするための最低環境
上記の厳しい現実を踏まえた上で、SoftBank AirでApex Legendsをプレイするためには、絶対にクリアしなければならない2つの「必須条件」があります。このどちらか一方でも欠けている場合、快適なプレイは絶望的です。
必須条件1:5G対応のAirターミナル(5または6)であること
4G回線では、Ping値やJitterが大きくなりすぎるため、Apex Legendsのような競技性の高いゲームは非常に困難です。Ping値が比較的改善される5Gでの接続が、最低限のスタートラインとなります。お使いの端末がAirターミナル4以前の旧式モデルである場合は、まず最新端末への機種変更を検討してください。
必須条件2:ゲーム機・PCは「有線LAN接続」であること
これは**絶対に譲れない、最も重要な条件**です。家庭内のWi-Fi接続は、それ自体が遅延とパケットロスの大きな原因となります。Airターミナルがどれだけ良好な5G電波を掴んでいても、最後のラストワンマイルが不安定なWi-Fiでは意味がありません。Apex LegendsをプレイするPlayStation 5やPCは、必ずLANケーブルを使ってAirターミナルのLANポートに直接接続してください。これにより、家庭内で発生する遅延とパケットロスをゼロに近づけることができます。
第3章:【究極の最適化】Ping値を下げるための「5Gハンティング」
必須条件をクリアしたら、いよいよAirターミナルの性能を極限まで引き出すチューニング作業に入ります。目標は、単に5G(青ランプ)を点灯させることではありません。**最もPing値が低く、安定する5G電波を掴む「奇跡の1点」**を探し出すことです。
ステップ1:PCでPing値を常時監視する
まず、PC(Windows)のコマンドプロンプトを開き、「ping 8.8.8.8 -t」と入力して実行します。これにより、Googleのサーバーに対して1秒ごとにPingを送り続け、その応答速度をリアルタイムで表示させることができます。この画面を開いたまま、作業を進めます。
ステップ2:設定画面で「電波の品質(SINR)」を監視する
次に、別のウィンドウでAirターミナルの設定画面(http://172.16.255.254)にログインし、「モバイルネットワーク情報」を開きます。ここで注目するのは、5Gの電波強度「RSRP」よりも、電波の品質を示す**「SINR」**です。このSINRの数値が高いほど、ノイズの少ないクリーンな電波を受信できており、Ping値やパケットロスの低下に繋がります。
ステップ3:2つの数値を睨みながら、最適な設置場所を探す
PCのPing値と、設定画面のSINR値、この2つの数値を同時に見ながら、Airターミナルを家中の窓際に移動させ、さらにその場で本体の向きを1cmずつ、数度ずつ変えていきます。目標は、**「SINRが最も高く、かつ、Ping値が最も低く安定する」**という、唯一無二のスイートスポットを探し出すことです。時間はかかりますが、この作業があなたのApexライフを左右します。
第4章:【最後の仕上げ】ゲーム内でのサーバー選択
最適な設置場所が見つかったら、最後にApex Legendsのゲーム側でも設定を行います。Apex Legendsは、起動時のタイトル画面で、接続するデータセンター(サーバー)を手動で選択できます。ここで、**「Tokyo」と表示されているサーバーの中から、Ping値が最も低いサーバー**を選択しましょう。これにより、物理的な距離が最も近いサーバーに接続され、遅延を最小限に抑えることができます。
結論:カジュアルプレイは可能。ただし「光回線」が最適解であることは変わらない
SoftBank AirでApex Legendsをプレイするための、あらゆる最適化手法を解説しました。これらの手順を全て、そして完璧に実行すれば、カジュアルマッチや友人とのプレイを楽しむ上では、十分にプレイ可能な環境を構築できる可能性はあります。
しかし、忘れてはならないのは、SoftBank Airが無線を利用するサービスである以上、天候や時間帯によるパフォーマンスの揺らぎから、完全に逃れることはできないという事実です。もし、あなたがランクマッチで高みを目指す、あるいは大会への出場を考えるような、コンマ1秒の遅延も許されない競技的なプレイを求めるのであれば、その唯一の答えは、依然として「光回線」にあります。
ご自身の住環境やゲームとの向き合い方を考慮し、SoftBank Airで最高の環境を追求するのか、あるいは光回線への乗り換えを決断するのか。この記事が、そのための判断材料となれば幸いです。