「工事不要で手軽なSoftBank Airを契約したい。でも、もし自宅の電波状況が悪くて、使い物にならなかったらどうしよう…」――高額な端末を購入する契約だからこそ、このような不安を感じるのは当然のことです。しかし、安心してください。そんな万が一の事態から、あなたを守ってくれる強力な制度が存在します。それが、「初期契約解除制度」です。

一般的に「8日間のお試し期間」のように知られているこの制度ですが、その実態はソフトバンクが独自に提供するキャンペーンではなく、法律で定められた、私たち消費者の正当な権利です。しかし、その権利も、正しい知識を持って、適切な手順を踏まなければ、行使することはできません。

この記事では、SoftBank Airの「初期契約解除制度」に完全に焦点を当て、その法的根拠から、適用のための厳密な条件、失敗しないための完璧な手続き手順、そして見落としがちな金銭的な注意点まで、あなたがこの権利を100%正しく行使するための、あらゆる情報を網羅した完全なマニュアルです。

第1章:【基本知識】初期契約解除制度とは何か?

まず、この制度がどのようなもので、なぜ存在するのかを正確に理解しましょう。

ソフトバンクのキャンペーンではなく、法律で定められた「消費者の権利」

初期契約解除制度は、電気通信事業法に定められた、携帯電話やインターネット回線などの通信サービスにおけるクーリングオフに似た制度です。サービスの提供エリアや通信品質などについて、契約前に利用者が正確に理解するのが難しいという特性があるため、「実際に使ってみて、契約内容と実態に乖離があった場合」に、利用者を保護するために設けられました。

つまり、これはソフトバンクの「ご厚意」ではなく、あなたが当然に主張できる「権利」なのです。この制度を利用することに、何ら引け目を感じる必要はありません。

制度を利用できる2つの正当な理由

法律上、この制度が利用できるのは、主に以下のようなケースです。
1. 電波状況が不十分な場合:SoftBank Airの場合、これが適用理由のほとんどを占めます。「自宅がサービス提供エリア内と聞いて契約したが、実際に設置すると電波が著しく弱い(LEVELランプが赤点灯など)、または速度が異常に遅く、使い物にならない」といったケースです。
2. 契約前の説明が不十分だった場合:契約内容について、事実と異なる説明を受けたり、重要な事項についての説明がなかったりした場合も、適用の対象となります。

第2章:【最重要】運命を分ける「8日間」の正しい数え方

この制度で最も重要なのが、「8日間」という期間の定義です。多くの人がここを誤解し、権利を失効させてしまいます。

起算日(1日目)は「端末の到着日」ではない!

絶対に間違えてはいけないのが、「8日間」のカウントが始まる「起算日(1日目)」です。これは、Airターミナルが自宅に届いた日ではありません。ソフトバンクから送られてくる**「ご契約内容を記載した書面(契約書面)」を、あなたが最初に受け取った日**が1日目となります。

【具体例】
・10月1日:Airターミナル本体が自宅に到着
・10月3日:契約内容が記載された封書が郵便で届く → **この日が1日目!**
・10月10日:初期契約解除を申し出ることができる**最終日(8日目)**

契約書面は、端末とは別に普通郵便などで送られてくる場合があるため、見落とさないように注意が必要です。契約後は、ポストを毎日確認するようにしましょう。

第3章:【実践】初期契約解除を完璧に実行する全手順

「電波が悪く、解約を決意した」――そう決めたら、以下の手順を冷静に、そして迅速に実行してください。

ステップ1:8日間のうちに、電波状況を徹底的にテストする

契約書面が届いたら、そこからが本番です。家中の様々な窓際にAirターミナルを設置し、LEVELランプの状態や、スピードテストの結果を記録します。夜間など、実際に利用する時間帯に十分なパフォーマンスが出るかを、数日間かけて徹底的にテストし、「この品質では利用継続は困難だ」という客観的な事実を固めます。

ステップ2:サポートセンターへ電話し、明確に意思を伝える

解約の意思が固まったら、期限内にSoftBank Airサポートセンター(0800-222-5090)へ電話をかけます。ここで最も重要なのは、単に「解約したい」と伝えるのではなく、**「初期契約解除制度を利用して、契約を解除したい」**と、制度名を明確に告げることです。

【電話での会話シミュレーション(トークスクリプト)】
あなた:「お世話になります。〇〇(契約者名)です。先日契約したSoftBank Airですが、自宅の電波状況が著しく悪く、利用が困難なため、初期契約解除制度を利用して、契約を解除させていただきたく、ご連絡いたしました。」
オペレーター:「左様でございますか。ご不便をおかけし申し訳ございません。それでは、お手続きを…」

このように、制度名を明確に伝えることで、オペレーターは通常の解約手続きではなく、初期契約解除の専用フローで対応してくれます。

ステップ3:Airターミナル本体と付属品を返送する

通常の解約とは異なり、初期契約解除の場合は、**購入したAirターミナル本体と、その付属品一式(電源アダプタ、LANケーブルなど)をソフトバンクへ返送する必要があります。**電話の際に、オペレーターから返送先の住所や、返送期限について案内がありますので、必ずメモを取ってください。

返送する際は、機器が届いた時の箱に入れ、輸送中に破損しないように梱包します。返送にかかる**送料は、原則として利用者負担(元払い)**となります。必ず追跡番号のある配送方法で発送し、手続きが完了するまで控えを保管しておきましょう。

第4章:【費用】「完全無料」ではない!支払い義務が残るもの

初期契約解除制度を利用すれば、高額な「契約解除料」や「端末代金」の支払いは全額免除されます。しかし、「完全無料」で全てがなかったことになるわけではありません。以下の費用は、支払い義務が残ります。

・契約事務手数料:契約時に発生した3,300円の事務手数料は、返金の対象外です。
・利用した期間の日割り料金:実際にサービスを利用した数日間分の月額料金は、日割りで計算されて請求される場合があります。(※ソフトバンクの対応により変動する可能性があります)
・端末の返送料金:前述の通り、Airターミナルを返送する際の送料は自己負担となります。

数千円程度の費用は発生しますが、数万円にのぼる端末代の残債を支払うことに比べれば、損害は最小限に抑えられます。

まとめ:初期契約解除は、あなたの権利。賢く、そして計画的に行使しよう

SoftBank Airの初期契約解除制度は、工事不要というメリットの裏にある「実際に使ってみないと電波状況が分からない」というリスクから、私たち消費者を守ってくれる、非常に重要で強力な権利です。

その権利を最大限に活かす鍵は、「8日間の起算日」を正確に把握し、その期間内に徹底的なテストを行い、そして期限内に正しい手順で意思を伝えること。この計画的なアプローチさえできれば、あなたはもうSoftBank Airの契約で失敗を恐れる必要はありません。