「5G対応の最新Airターミナルを契約したのに、ランプはいつも緑色のまま…」「公式サイトで5Gエリア内なのは確認したはずなのに、なぜか4Gにしか繋がらない」――SoftBank Airの5Gサービスに期待していた方にとって、これほどがっかりすることはありません。同じ料金を払っているのに、本来得られるはずの高速通信を享受できないのは、大きな不満に繋がります。
しかし、5Gに繋がらないのには、必ずどこかに明確な理由が潜んでいます。そして、その多くはユーザー自身の知識と少しの工夫によって、解決できる可能性があるのです。
この記事は、「5Gエリアのはずなのに、なぜか4Gにしか繋がらない」という、特定のユーザーが抱える非常に具体的で深刻な問題を解決するための、完全なステップ・バイ・ステップの診断・解決マニュアルです。あなたのAirターミナルが5Gの電波を掴めない根本原因を突き止め、そのポテンシャルを最大限に引き出すための、あらゆる知識とテクニックをここに集約しました。
第1章:【大前提】5Gに繋がらない3つの根本的な理由
具体的な対処法に進む前に、まず、絶対に確認しておかなければならない3つの大前提があります。もし、あなたの状況がこれらに当てはまる場合、以降の対策は意味を成しません。
理由1:お使いの端末が5G非対応の旧機種である
当たり前ですが、5G通信を行うには、5Gに対応した端末が必要です。SoftBank Airでは、2021年10月以降に登場した「Airターミナル5」以降のモデルがこれに該当します。もし、あなたが利用しているのが、それ以前の「Airターミナル4/4 NEXT」などの旧式モデルである場合、たとえ日本で最高の5Gエリアに住んでいたとしても、物理的に5Gの電波を掴むことはできません。この場合は、まず最新端末への機種変更を検討する必要があります。
理由2:ご自身の住所が、実は「5Gエリアの境界線外」である
「この辺りは5Gエリアだと思っていた」という思い込みは危険です。5Gのエリアはまだら模様に広がっており、道を一本挟んだだけでエリア内外が分かれることも珍しくありません。必ずソフトバンク公式サイトの「SoftBank Air エリア確認」ページで、ご自身の住所を「丁目」レベルまで正確に確認し、「5G」のマークが付いているかを再確認してください。
理由3:「5Gプラン」への切り替えが必要だと思い込んでいる
SoftBank Airには、「4Gプラン」と「5Gプラン」という個別の料金プランは存在しません。プランは常に「Air 4G/5G共通プラン」の一つです。プランの切り替え忘れが原因で5Gに繋がらない、ということはあり得ませんので、ご安心ください。
第2章:【原因分析】エリア内なのに5Gを掴めない科学的理由
上記の前提をクリアしているにも関わらず5Gに繋がらない場合、その原因はあなたの「住居の環境」にある可能性が極めて高いです。
原因の大部分は「窓」にある ― Low-E複層ガラスの罠
5Gで使われる「Sub6」という周波数帯の電波は、4Gの電波よりも直進性が強く、障害物による減衰が大きいという特性を持っています。特に、近年のマンションや高機能な住宅で採用されている「Low-E複層ガラス」は、断熱性を高めるためにガラス表面に特殊な金属膜がコーティングされており、この金属膜が5Gの電波を強力に反射・減衰させてしまいます。たとえ窓際にAirターミナルを置いても、このガラスが壁となり、室内まで十分な強度の5G電波が届いていないのです。
基地局のアンテナ角度と建物の構造
基地局のアンテナは、地上の広範囲を効率的にカバーするため、少し下向き(チルト角)に設置されています。そのため、基地局のすぐ近くにあるタワーマンションの超高層階などでは、かえって電波が弱くなることがあります。また、鉄筋コンクリートの壁は電波を著しく遮断するため、窓から離れた部屋の奥では、5Gの電波はほぼ期待できません。
第3章:【実践】5G電波を強制的に掴みに行く「5Gハンティング」全手順
ここからが本題です。あなたの家の中に、かろうじて届いている微弱な5Gの電波を、執念で探し出し、Airターミナルに掴ませるための、究極の実践ガイドです。
ステップ1:現状を正確に診断する
まず、PCやタブレットでAirターミナルの設定画面(http://172.16.255.254)にログインし、「端末情報」や「モバイルネットワーク情報」といったページを開いておきます。この画面に表示される以下の数値を、私たちは羅針盤とします。
・通信モード:現在「4G」になっていることを確認します。
・5Gの電波数値:「RSRP(受信強度)」と「SINR(信号品質)」の数値が表示されているかを確認します。もし数値が表示されていれば、微弱ながらも5Gの電波を検知している証拠です。
ステップ2:家中の「窓」を探索する
Airターミナルを持ったまま、家の中にある全ての窓際をゆっくりと移動します。ベランダに出られるのであれば、そこが最も有力なスポットです。窓際と言っても、窓の右端と左端、上と下では受信感度が全く違うことがあります。
ステップ3:設定画面の数値を睨みながら、ミリ単位で角度を調整する
最も有望そうな窓際で、設定画面の5GのRSRPとSINRの数値をリアルタイムで見ながら、Airターミナルの向きを1cmずつ、あるいは数度ずつ、360度ゆっくりと回転させていきます。数値が最も良くなる(RSRPが-90dBmに近づき、SINRが10を超える)「奇跡の1点」を根気強く探し出します。この作業中に、突然「5G/4G」ランプが青色に変わり、通信モードが「5G」に切り替わる瞬間が訪れるかもしれません。
ステップ4:接続が安定するかをテストする
5Gを掴むことができたら、その場所で数時間から1日程度、接続が安定するかをテストします。スピードテストを複数回行い、満足のいく速度が出ているか、4Gに頻繁に落ちてしまわないかを確認します。もし安定するようなら、そこがあなたの家の「5Gベストポジション」です。
第4章:【最終判断】不安定な5G vs 安定した4G
様々な努力をしても「5Gを掴むが、すぐに4Gに戻ってしまう」「5Gに繋がっているはずなのに、速度が不安定でかえって遅い」といった状況に陥ることがあります。これは、掴んでいる5Gの電波が弱すぎるために起こる現象です。
この場合、あなたは究極の選択を迫られます。それは、**「不安定で速いかもしれない5G」を追い求めるか、「速度はそこそこでも盤石な安定性を持つ4G」で満足するか**、です。
オンラインゲームやビデオ会議など、通信の安定性が最優先される用途がメインであれば、無理に5Gを追うよりも、あえて部屋の少し奥まった場所にAirターミナルを置き、安定した4G接続を維持する方が、結果的に快適なインターネットライフを送れる場合も少なくありません。
まとめ:5G接続は「場所」が全て。そして、知識がそれを補う
SoftBank Airが5Gに繋がらず4Gになってしまう最大の原因は、あなたの家まで届く5Gの電波が、壁や窓ガラスによって弱められていることにあります。これを解決する公式な「設定」は存在しません。
しかし、この記事で解説したように、電波の特性を理解し、設定画面の数値を武器として、物理的に最適な場所を探し出す「5Gハンティング」を行うことで、その状況を覆せる可能性は十分にあります。それは、あなたの知識と根気が、快適なインターネット環境をその手で掴み取るための、唯一にして最強の手段なのです。